親から見る中高生のお部屋の片づけの日常
戦場と化す子ども部屋。中高生を持つ母が語る「片づけ」の日常と、親子の境界線の見つけ方
「ああ、まただわ」
そう心の中でつぶやきながら、私は今日も子ども部屋のドアの前で深呼吸をします。中高生のわが子を持つ皆さん、この光景に心当たりのある方は少なくないでしょう。特に、子どもが思春期を迎え、部活や勉強、友人関係で忙しくなるにつれ、彼らの部屋は一種の「聖域」、そして親にとっては「戦場」と化します。
床に散乱する教科書、脱ぎっぱなしのジャージ、お菓子のゴミ、そしてなぜか増え続ける趣味のグッズ……。
かつては可愛らしいおもちゃが並んでいたこの部屋は、今や彼らの「忙しさ」と「プライバシー」という目に見えない壁に守られ、混沌の渦の中にあります。
なぜ、中高生の部屋は片づかないのか?
親としてつい口から出そうになる「どうして片付けられないの!」という言葉。しかし、彼らが片付けられないのは、「サボっているから」だけではないということを、まず私たちが理解しなくてはいけません。
中高生の部屋にモノが増え、片づけが難しくなるのには、明確な理由があります。これは性別に関わらず、この時期の子どもたちに共通する特性です。
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物の種類の爆発的増加
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教科書、副教材、参考書、タブレット、そして膨大な量のプリント。これらが定期的に入れ替わり、管理が複雑になります。
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部活道具(ボール、ラケット、ユニフォームなど)や、推し活グッズ、ファッションアイテムなど、彼らの**「アイデンティティ」を構成する物**が一気に増えます。
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時間と心身の余裕のなさ
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朝から晩まで学校、部活、塾……。家に帰れば、食事・風呂・宿題で精一杯。
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疲労困憊の彼らにとって、部屋の片づけは最も優先順位の低いタスクになります。彼らのエネルギーは、もっと重要な「学校生活」や「自己成長」のために使われているのです。
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「一時置き場」の概念の崩壊
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「後でやるから」「今使うから」と床や椅子に置かれた教科書や服は、そのまま定着してしまいます。これは彼らにとって**「一番手の届きやすい場所」**なのです。
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親の私たちに必要なのは、この現実を理解し、**「感情的な小言」ではなく「冷静なサポート」**に切り替えることです。
母の葛藤:どこまで口を出し、どこから手を引くか
中高生の片づけで最も難しいのは、**「親子間の適切な距離感」**を見つけることです。
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口を出しすぎると…:「うるさい」「自分の部屋なんだから放っておいて」と反抗され、親子関係が悪化する。
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放っておきすぎると…:清潔や衛生面で問題が生じたり、大切な提出物が見つからず、困るのは結局本人(そして親)になる。
このジレンマの中で、私が見つけた一つの答えは**「境界線」**を明確にすることでした。
1. 親が手を出さない「聖域」を決める
彼らの**「個人の部屋の中」**は、原則として彼らの責任範囲と認めます。
ただし、最低限のルールを提案し、合意を得ます。
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【衛生面の確保】 食べ物のゴミや濡れたタオル、生ゴミは部屋に放置しない。
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【共有スペースの死守】 リビングや廊下など、家族全員が使う場所に私物を持ち出さない。
この二点だけは親が口を出す権利を持つ、と取り決めます。彼らのプライバシーを尊重しつつ、家族全体の生活を乱さないための線引きです。
2. 親は「仕組みづくり」の技術者になる
彼らは片付けが苦手でも、**「楽な仕組み」**さえあれば意外と動くことがあります。親は「片付けろ」と言う代わりに、「どうすれば楽になるか」を一緒に考えるサポーターに徹します。
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「収納を直感的に」:細かすぎる分類はNG。**「学校で使うもの」「それ以外」「脱いだ服」**の3つに大きく分け、ざっくり入れられる収納ボックスやランドリーバスケットを配置します。
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「動線を遮らない」:床にモノが散乱するなら、一時的に**「一時置き用のカゴ」**を置いて、床面積を増やすことを優先します。
彼らにとっての「快適さ」は、「ホテルみたいにスッキリした部屋」ではなく、「必要なものにすぐに手が届く部屋」である可能性が高いのです。その「使いやすさ」を追求するのが親の役目です。
片づけから学ぶ「自己管理能力」と「親離れ」
部屋の片づけは、単なる掃除や収納の技術ではありません。それは、「自己管理能力」を育む大切なプロセスです。
プリント一枚を捨てるか残すか。教科書を元の場所に戻すか、机の上に放置するか。その一つ一つの判断が、将来社会に出てからの「時間の使い方」「物の管理」「意思決定」につながっていきます。
私たち親は、つい「完璧な部屋」を目指してしまいますが、彼らの部屋の混沌は、彼らが**「自分で自分のテリトリーを管理する方法」**を学んでいる途中の姿なのかもしれません。
彼らが本当に困ったとき(「あのプリントがない!」「次のテスト範囲の教科書はどこ?」)こそ、親が口を出す絶好のタイミングです。その時、「だから言ったでしょ」ではなく、「一緒に探そう。次からどうすれば見つかるようにできるかな?」と冷静に寄り添うことが、彼らの成長を促します。
終わりに:お母さん、深呼吸しましょう
今日もまた、子ども部屋のドアを開けてため息をついたあなたへ。
完璧な部屋を目指さなくていいんです。私たちは、彼らが心身ともに自立していく大切な時期を、見守る立場にいるのです。
「部屋が片付いていなくても、元気ならよし」
そう割り切り、子ども部屋以外の共有スペースだけでもスッキリさせて、あなた自身の心の安寧を保ちましょう。
いつか彼らが大人になった時、彼ら自身のスタイルで部屋を整える日がきっと来ます。それまでは、彼らの成長に寄り添いながら、この「戦場」とも呼べる日常を、穏やかな視線で見守っていきましょう。
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