近年に固定電話がなくなりつつある
自宅の固定電話番号(固定電話自体)が使われなくなってきた背景には、主に以下の2つの大きな要因と、それに伴う社会の変化があります。
1. スマートフォン・携帯電話の普及
これが自宅電話番号の減少の最大の理由です。
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「個人」対「個人」の連絡が主流に:
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以前は家族間の連絡や、友人・知人への連絡は「家に電話をかける(世帯宛て)」のが主流でした。
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スマートフォンの普及により、誰もが個人の携帯電話番号を持つようになり、「個人」に直接連絡を取るのが当たり前になりました。
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場所を選ばない利便性:
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固定電話は家にいる時にしか使えませんが、携帯電話は外出先、通勤中など、どこにいても通話やメッセージのやり取りができます。この利便性の高さが固定電話の役割を奪いました。
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通話以外の機能:
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スマートフォンは通話だけでなく、メール、SNS、インターネット接続、カメラなど、多様な機能を持ち、生活の中心的なツールとなりました。
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2. 従来の電話設備(メタル回線)の維持の限界
固定電話の設備側の問題も、減少に拍車をかけています。
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設備の老朽化と移行(2024年問題など):
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従来の固定電話で使われていた中継交換機や信号交換機といった設備が老朽化し、2025年頃には維持が困難になるとされています。
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NTT東西は、これらの設備を維持コストの低い**IP網(インターネットを利用した仕組み)**へ順次切り替える計画を進めています(PSTNマイグレーション)。
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契約数の減少による維持費の増大:
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利用者がピーク時の約2割程度まで大幅に減少したため、残された固定電話回線の維持コストが相対的に高くなり、通信事業者側も従来のサービスを続けることが困難になっています。
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3. 社会的・経済的な背景
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コスト削減志向:
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携帯電話があれば事足りるため、年間の維持費(基本料金)がかかる固定電話は「無駄な出費」と見なされ、特に若い世代やシニア層で「固定電話じまい(解約)」が進んでいます。
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迷惑電話の増加:
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自宅の固定電話にかかってくる電話の多くが、セールスや詐欺などの迷惑電話であることも、「固定電話は不要」と考える一因になっています。
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IP電話・光電話への移行:
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インターネット回線(光回線など)を引く際、通話料が安くなる「ひかり電話(IP電話)」を固定電話の代替として利用する家庭が増えたことも、従来の固定電話(アナログ回線)の契約数を減らす要因となりました。
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【固定電話が「ある」メリット】
固定電話を持つことによって享受できる主な利点です。
メリット 詳細 高い社会的信用性 法人や個人事業主の場合、携帯電話番号よりも固定電話(市外局番から始まる番号)の方が信頼性が高いと見なされ、法人口座開設や融資審査などで有利になることがあります。 災害・停電時の通話安定性 従来のアナログ回線の電話機(黒電話や停電対応機)は、停電時でも電話回線からの電力で動作するため、緊急時の通信手段として一定の有効性があります。 FAXの利用 業種によっては、書類のやり取りにFAXが必須の場合があり、固定電話回線が必要です。(ただし、近年はインターネットFAXも普及しています。) 地域密着性の表示 市外局番(03, 06など)から始まる番号は、その地域の番号であることを示し、地域に根差したビジネスでの安心感につながります。 公私の分離 業務用の電話番号と個人の携帯電話番号を明確に分けられ、プライベートの時間が守りやすくなります。 【固定電話が「ない」デメリット】
固定電話を持たない(携帯電話のみで対応する)ことによって生じる主な不利益です。
デメリット 詳細 ビジネスでの信用低下 特に新規の取引先や銀行に対して、連絡先が携帯電話のみだと「実態がない」「信頼性に欠ける」と見なされ、機会損失につながるリスクがあります。 法人口座開設の困難さ 都市銀行などの金融機関では、事業実態を確認する上で固定電話の有無を重視することがあり、審査が厳しくなる、あるいは開設が却下される場合があります。 連絡先の変更手間 携帯電話番号は比較的変えやすく、機種変更やキャリア変更の際に番号が変わると、名刺やウェブサイト、契約書類などの連絡先変更手続きがすべて必要になります。 子どもの在宅確認の難しさ 子どもに携帯電話を持たせていない家庭では、外出先から自宅にいる子どもに確実に連絡を取る手段が限定されます。 迷惑電話対策の不徹底 従来の固定電話を解約することで、高齢の家族などにかかってくる特殊詐欺や悪質なセールス電話の入り口を物理的に断つことができます。固定電話がないことで、これらのリスクから守る効果があるとも言えます。(ただし、逆を言えば、固定電話を「ある」状態で解約することで、このメリットが「ない」ことによるデメリットが生じます)
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