愛知県内の空き家軒数と課題と取り組み
愛知県全体で公表されているデータは見当たりませんが、関連する統計や、自治体が把握している危険な空き家の状況から、全体像を推測することができます。
「不良住宅」や「危険な空き家」の定義は自治体や制度によって異なりますが、ここでは最も関連性の高い情報をもとに解説します。
空き家軒数
1.愛知県内の空き家総数と危険な空き家の状況
まず、愛知県全体の空き家と、その中で放置されている危険性の高い空き家の最新の状況です。
「特定空き家」として把握されている事例
「不良住宅」は、市町村が解体補助金の対象とする際に用いる評価基準です。これに相当する、倒壊の危険性などがある空き家は**「特定空き家」**として行政が特に注視しています。
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例えば、愛知県内で空き家率が最も高い南知多町では、倒壊の危険性がある特定空き家を約150軒把握しているという事例が報道されています(2022年時点)。
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各市町村が把握している**「不良住宅」や「特定空き家」**の数を合計すれば相当な数になりますが、この総数は県全体としては公表されていません。
2.「不良住宅」の大きな母数となる「旧耐震基準の住宅」
市町村の解体補助金の多くは、旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に着工)の住宅を主な対象としています。この層が「不良住宅」の大きな母数となります。
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耐震性を有していないと判断される木造住宅の割合は、刈谷市のデータ(2024年時点)によると、木造住宅総戸数のうち**約22.9%**となっています。
愛知県には現在も数多くの旧耐震基準の木造住宅が存在するため、これらの中で**「管理不全」や「著しい老朽化」**が進んだものが「不良住宅」と判定されています。
まとめ
愛知県内の**「不良住宅」の正確な統計数はありません**が、以下の状況が確認できます。
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空き家総数は43万戸を超えており、その中で約13万戸が放置空き家(管理不全に陥りやすい)です。
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この放置空き家の中には、市町村の老朽度判定によって**「不良住宅」**と見なされ、解体補助金の対象となる建物が多数含まれています。
これらの老朽化した住宅の解体や適切な管理を促進するため、各市町村が補助金制度を設けて対策を進めている状況です。
お住まいの地域や関心のある地域の具体的な「特定空き家」の状況については、その市町村の建築課や空き家対策担当課に問い合わせると、概ねの状況を教えてもらえることがあります
課題と取り組み
1.不良住宅・危険な空き家が増加した原因(社会背景)
愛知県内の空き家が増加し、その一部が「不良住宅」として地域社会に危険を及ぼしている主な原因は、以下の3つに集約されます。
A. 人口構造の変化と住宅需要のミスマッチ
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人口減少・高齢化の進行:
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住んでいた高齢者が亡くなったり施設に入居したりした後、子世代がすでに持ち家を持っているため、実家が空き家になります。
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特に過疎地域や、古くからの住宅街(名古屋市南区など)でこの傾向が顕著です。
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都市部への人口流出(地域差):
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愛知県全体では転入超過の地域が多いものの、尾張地域の郊外や東三河などの地方都市では、若年層の都市部への流出が続き、地域全体の住宅需要が低下しています。
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B. 住宅の老朽化と資産価値の低下
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旧耐震基準の住宅の老朽化:
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高度経済成長期(1970年代〜80年代初頭)に大量に建てられた住宅が築40〜50年を迎え、老朽化が進行しています。
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これらの多くは現在の耐震基準を満たしておらず、地震や台風で倒壊する危険性が高いため、「不良住宅」や「特定空き家」と判定されやすくなっています。
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C. 経済的・法的な要因
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「負の資産」としての空き家:
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相続問題: 相続人が複数いる場合、遺産分割協議がまとまらず、管理や処分の方針が決まらないまま放置されるケースが増えています。
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固定資産税の特例: 住宅が建っている土地は、更地にするよりも固定資産税が安くなる特例措置(住宅用地の特例)があるため、「解体費用をかけて更地にして税金が上がる」ことを避けるために、老朽化したまま放置されてしまうことが大きな要因でした。
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(※2023年の法改正により、管理不全空き家や特定空き家は特例の対象外となる措置が強化されています。)
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売却の難しさ: 特に再建築不可の土地にある家など、市場価値が低い空き家は、解体費用の負担とセットで考えると買い手がつきにくく、放置されがちです。
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2.愛知県内の市町村別 空き家対策の取り組み事例
愛知県内の市町村は、その地域特性(都市部、郊外、山間部など)に応じて、空き家を「ふやさない(予防)」「つかう(利活用)」「管理を促す」の3つの視点から対策を講じています。
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